
双極性障害の多くの方が、職場でさまざまな悩みや苦しみを経験しています。その中でも、「仕事が続かない」という経験は悩み深い問題の一つと言えます。
そこでこの記事では、双極性障害の方の「仕事が続かない」という問題をどのように克服していくか、「生活」「仕事」「職場」における工夫や対策を中心に、具体的な解決策を探ります。
まずは双極性障害の概要について話した後、仕事が続かない訳や仕事を続けるための対処法などを解説しました。後半では、どうしても辞めたくなった場合の処し方や、利用できる相談先・支援先の情報も載せておきました。
双極性障害のために、仕事が続きそうにないと不安を感じている方……大丈夫です!この記事を読むことで、あなたに合った工夫や対処法が必ず見つかります!一人で思い悩む前に、専門の相談機関、支援機関につながることもできます!
1.双極性障害とは
双極性障害とは、気分が高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」が繰り返される精神疾患です。双極性障害の方にいつも症状が現れるわけではなく、躁状態でもうつ状態でもない、いわゆる普通の状態があることが特徴です。
双極性障害には二つの種類があります。
【双極Ⅰ型障害】
双極Ⅰ型障害の躁状態は、社会生活に支障をきたすほどの激しい躁状態を引き起こします。例えば、夜も眠らずに動き回る、話が止まらない、話を遮られると大きな声で怒る、などです。
【双極Ⅱ型障害】
双極Ⅱ型障害の特徴でもある軽躁状態は、社会生活における著しい支障はない程度の躁状態のことを指します。本人が異常と捉えることはあまりなく、周囲が先に気づくことが多いです。
【うつ状態について】
双極性障害のうつ状態では、気分が落ち込む、興味・関心が無くなるなど、いわゆるうつ病のような症状がみられます。
2.双極性障害で仕事が続かないのはどうして?
双極性障害で仕事が続かないのは、躁状態とうつ状態、それぞれが引き起こす集中力の低下や人間関係のトラブル、うつ状態での欠勤などによるものです。
【躁状態(軽躁状態)が引き起こす離職リスク】
躁状態の時には、自分は何でもできるという万能感に陥りがちです。エネルギーに溢れ、睡眠時間を削っても疲れを感じません。一見、良さそうなのですが、このような状態が同僚との衝突や、仕事上の行き過ぎた行動を引き起こします。
具体的には以下の通りです。
・キャパシティオーバー:「私ならできます!」と、自分の能力以上の仕事や責任を引き受けてしまいます。
・人間関係のトラブル:自分が正しいとの思い込みから、上司や同僚に対して喧嘩腰になったり、激しく口論したりすることがあります。
・突然の退職:「今の会社は自分には物足りない」「もっとデカい仕事がしたい」などと思い込み、後先考えないで突然退職してしまうことがあります。
【うつ状態が引き起こす離職リスク】
うつ状態の時には、集中力や思考力が低下してミスが増えたり、体調不良により出勤できなくなったりと、仕事の継続が身体的・精神的に困難になります。
具体的には以下の通りです。
・勤怠の悪化:体が鉛のように重く感じられ、朝起き上がれない日が続きます。遅刻や欠勤が増え、外出すらもおっくうになります。
・能力低下による自信喪失:集中力や思考力が低下することで、簡単な事務作業や判断さえ難しくなります。「以前はバリバリ仕事をこなせていたのに、今は何もできない」という落差に苦しみ、自分を責めてしまいます。
・「申し訳なさ」からの退職:「もうこれ以上、会社には迷惑をかけられない」という自責の念から、休職制度などを利用する前に、自ら退職を選んでしまうことがあります。
3.双極性障害でも仕事を続けられる工夫や対策
仕事を長く続けるためのポイントは、躁状態やうつ状態の波をなくすことではなく、波があっても溺れないように転覆しない船に乗ることです。具体的な工夫や対策を紹介しましょう。
【医療と連携する】
仕事が忙しくなったり、調子が良くなったりすると、つい自己判断で服薬を中断してしまう方がいます。これは症状を悪化させてしまう最大のリスクです。
双極性障害の治療の基本は薬物療法です。仕事のパフォーマンスを維持するためにも、医師から指示がない限り、勝手な判断で薬をやめてはいけません。
主治医と相談しながら、自分に合った処方を見つけて飲み続けることが大切です。
【生活リズムを管理する】
不規則な生活は脳へのストレスとなり、躁状態やうつ状態の引き金になります。症状を安定させるためには、規則正しい生活が鍵になります。また、正しい食生活や適度な運動も大事な要素です。
・睡眠時間の確保:深夜残業や徹夜は絶対に避けましょう。病気の安定のために睡眠時間は削らない覚悟が必要です。
・休日の過ごし方:休日であっても昼頃まで寝ていたり、一日中忙しくしていたりせず、できるだけ平日と同じようなリズムで過ごしましょう。
【セルフモニタリングする】
セルフモニタリングとは、自分の心や体の状態などを客観的に観察することです。気分の変化には必ず前触れがあります。それをセルフモニタリングにより早期に察知できれば、悪化する前に適切に対処できます。
・躁の前触れの例:アイデアが次々と浮かぶ、早口になる、怒りっぽくなる、睡眠不足でも平気になる、買い物の額が増える。
・うつの前触れの例:朝起きるのがつらい、趣味を楽しめなくなる、身だしなみが面倒になる、物事を決められなくなる。
これらの前触れが出たら、仕事のペースを落としたり、主治医に相談したりするなど、できるだけ早めに対処しましょう。
【オープン就労を選ぶ・合理的配慮を求める】
「オープン就労」とは、障害を職場に伝えて働くこと、「クローズ就労」は障害を隠して働くことです。長く働くことを優先したいのなら、職場において、オープン就労を選び、「合理的配慮」を求めましょう。
合理的配慮とは、障害のある人が働く上での障壁を取り除くために、職場側が必要かつ適切な変更や調整を行うことです。
以下に例をあげます。
・残業の免除
・フレックスタイム制度の適用
・通院時間の確保
・業務量の調整や、マルチタスクを避けた業務の割り振り
・定期的な面談の実施
以上のような変更や調整を行うことで、症状が悪化した時でも働きやすくなります。
4.双極性障害の方に向いてる仕事
向いている仕事は一人ひとり異なりますが、双極性障害の方にとって「症状を悪化させにくい環境」という視点で仕事を選ぶことが大切です。例えば、不規則な仕事や業務量の定まらない仕事は向いていません。また、人と対話する機会の多い仕事も向いていません。では、どのような仕事が双極性障害の方に向いているか、以下をご覧ください。
【リズムが一定で、マイペースで行える仕事】
・事務職:業務内容が決まっていて、ルーティンワークが中心であるため、突然の対応や急な予定変更が少なく、精神的負担が少ない仕事です。
・データ入力・書類整理:ひたすら自分のペースで進められる業務であり、対人ストレスが少なく、作業に集中しやすい環境下で働けます。
・清掃・軽作業:作業手順が決められていて、仕事の流れが急に変わることはありません。トラブルの少ない仕事でもあり、気分の波に影響されにくいと言えます。
【専門性を活かせる仕事】
・Webデザイナー・ライター・プログラマー:これらの仕事は、フリーランスや在宅ワークで行われることも多く、働く時間や場所を自分でコントロールできる環境であれば、適職となり得ます。また、人とのコミュニケーションが苦手な方でも、一人で作業に打ち込める環境を選びやすい仕事です。
・資格職(図書館司書など):専門知識をベースにした仕事は、職場が変わっても即戦力として働けるため、万が一転職してもキャリアが途切れにくいというメリットがあります。
5.仕事を辞めたくなった時には
「この会社、もう辞めたい!」と思っても、その場で上司に伝えないでください。辞めたいと思ってから、1週間くらいは行動を起こさないでください。その間に、気分が変わることはよくあります。
【それは躁状態のせいかも…】
「この会社はつまらない。ほかの会社なら、もっとデッカイことができるはず!」と感じて辞めたい場合、それは躁状態のせいかも知れません。いきなり退職願いを出す前に、主治医に相談しましょう。
【それはうつ状態のせいかも…】
「自分は本当に役立たずだ。もう会社には迷惑をかけられない」と感じて辞めたい場合、それはうつ状態によるものかも知れません。いったん、十分な休養を取って治すという選択肢もあるはずです。
【辞める前に「休職」を考えよう】
まずは会社の就業規則を確かめ、「休職制度」が使えることを確認しましょう。休職して治療に専念し、回復してから職場に復帰するのです。傷病手当金を受け取りながら治療に専念するなら、復職か転職かを落ち着いて考えられます。
一時の「辞めたい!」という衝動に流されず、「会社に籍を残したまま休む」という選択肢を忘れないでください。
6.利用したい相談先と支援先
一人で抱え込まずに、医師や相談・支援機関と連携して、治療と就労の両面からサポートを受けることが、長く働き続けるための大事なポイントです。
【医療機関(精神科など)】
基本的なことですが、主治医はあなたの病気の特性や症状をよく知るパートナーです。仕事の悩みについても、「医学的な見地」からアドバイスをもらえます。積極的に主治医に相談しましょう。産業医がいる職場なら、産業医との連携も可能です。
【ハローワーク(障害者関連窓口)】
ハローワークでは、障害のある方向けに専門的に相談に乗る窓口を設置しています。専門スタッフによる担当者制の支援です。障害者就業・生活支援センターや地域障害者職業センターなどの支援機関と協力して、就職から職場定着まで一貫した支援を実施しています。
【障害者就業・生活支援センター】
仕事面と生活面の両方を一体的にサポートしてくれる機関です。就職活動の相談や職場定着支援(職場訪問など)のほか、生活リズムの乱れなどの相談にも応じます。長期的なサポート役を担ってくれる機関です。
【地域障害者職業センター】
専門的な職業リハビリテーションを行う機関です。職業相談、職業能力評価、職業準備支援など、個別ニーズに合わせたプログラムを提供します。休職中の人がスムーズに復職するための「リワーク支援(職場復帰支援)」も実施しています。
【就労移行支援事業所】
一般就労(障害者雇用枠を含む)を目指す障害のある方を対象に、職業訓練や就職活動のサポートを行う通所施設です。実務だけでなく、「自分の取扱説明書」を作るための自己分析や、ストレス対処法、模擬職場での実習などを通して、働くための準備ができます。
7.まとめ
この記事では、双極性障害について解説した後、双極性障害の方の仕事が続かない原因と、仕事を続けるための対処法、そして相談先などを紹介しました。
双極性障害と共に働き続けることは、決して容易ではないでしょう。しかし、病気のことをよく知り、生活や仕事面では工夫して対応し、適切な支援者・支援機関ともつながるなら、きっと乗り越えていけます。
支援機関としておススメなのが、「ケイエスガード」です。ケイエスガードは、仕事探しのサポートを看板に掲げる就労移行支援事業所です。
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