ADHD(注意欠如多動症)の特性のため、仕事や生活場面で悩みを抱えている方は少なくありません。
「また大事な約束を忘れてしまった…」「仕事のタスクが多すぎて、何から手をつけていいか分からない…」 このような悩みを抱えていませんか?
当記事では、改めてADHDの特性について解説した後、仕事や生活で起こり得る困り事に対して、どのように対処すれば良いのか紹介します。
この記事を読めば、ADHDの方の自己管理術が分かります。自己管理のやり方が身に付くと、職場では業務遂行がスムーズになり、家庭では毎日の暮らしが楽になります。つまり、ADHDの方の仕事と生活の各場面が、心地よく様変わりするのです。
ADHDの特性を理解し、ADHDの自己管理術を知りたい方は、当記事を最後までお読みください。終わりに、信頼できる相談先と支援機関の情報も載せてあります。
ADHDとは
ADHD(注意欠如多動症)は、アメリカ精神医学会のDSM-4(精神疾患の診断・統計マニュアル第4版)によると、以下のように定義されています。
「ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される」
また、日本の文部科学省では、以下のように定義しています。
「身の回りの特定のものに意識を集中させる脳の働きである注意力に様々な問題があり、又は、衝動的で落ち着きのない行動により、生活上、さまざまな困難に直結している状態をいいます」
ADHDの特性
ADHDの方には、12歳以前から、学校や家庭、職場などの複数の場面で、本来の発達水準からみて不相応な振る舞いが見られます。例えば以下のようなものです。
・注意を持続させることが困難(不注意)
・忘れ物、なくし物が多い(不注意)
・うわの空でぼんやりしてしまう(不注意)
・落ち着きがない(多動性)
・しゃべり続けてしまう(多動性)
・授業中、会議中でも立ち歩く(多動性)
・待つことが苦手(衝動性)
・行動の抑制が難しい(衝動性)
・順序立てて行動することが苦手(衝動性)
ADHDの方には上記のような特性がいつも認められ、そのために日常生活に困難が伴う状態です。
以下に、ADHDの特性とタイプをまとめます。
―3つの特性―
【特性① 不注意】… 忘れっぽく集中できない、など
【特性② 多動性】… じっとしていられない、など
【特性③ 衝動性】… 考える前に行動してしまう、など
―3つのタイプ―
【タイプ① 不注意優位型】… 不注意の特性が強く出ているタイプ
【タイプ② 多動性・衝動性優位型】… 多動と衝動の特性が強く出ているタイプ
【タイプ③ 混合型】… 多動と衝動、不注意の特性が混ざり合って強く出ているタイプ
※タイプ分けは、あくまで症状の現れ方の傾向を示すもので、個人差があります。
ADHDの特性による日常生活の困難さは、成人期にも持続することが少なくありません。
成人期の有病率はおよそ2.5%程度で、男女比は1対1に近い状況です。
ADHDの大人の方は、仕事のミスが多かったり、他のことを考えがちであったりします。また、電話の折り返しや約束事を忘れてしまったり、計画的に行動することが苦手であったりします。
ADHDの方は、自閉スペクトラム症、限局性学習症、協調運動症、トゥレット症などの他の発達障害や、うつ病、双極症、不安症群などの精神疾患を伴うことがあります。
ADHDの方が自己管理を苦手とする理由
ADHDの方は、その特性により、仕事や生活上の自己管理を苦手とするケースがあります。
ADHDの方が自己管理を苦手とする理由について解説します。
■注意の持続が難しい
ADHDの方は、集中力を長時間維持することが苦手なため、計画やタスクの完了に支障をきたすことがあります。会議中に、他の考えごとに気を取られ、会議内容をうまく把握できないというケースもあります。
■衝動性の影響から
衝動的な行動や思い付きによる行動のために、計画的に物事を進めることが難しく、担当するプロジェクトの進行が遅れることがあります。家庭では、衝動的な発言や行動から家族との関係が悪化することもあります。
■実行機能に課題あり
物事を計画し、優先順位を付けて実行する「実行機能」が低下していることが多く、スケジュール管理や時間配分が苦手です。実行機能がうまく働かないと、行動がちぐはぐになり、やるべきことに優先順位を付けられません。
■時間感覚の歪み
ADHDの方は、時間の流れを正確に認識することが難しく、このことが時間管理の障害となります。そのため、予定通りに行動することや、締め切りを守ることが苦手です。時間感覚の歪みが、未来の計画立てや目標設定に影響を与えることもあります。
■感情コントロールが難しい
「多動性」と「衝動性」の傾向が強い方は、感情コントロールを苦手とする傾向があります。感情の起伏が激しい場合、ストレスやフラストレーションが自己管理に影響を与えることがあります。
上記の要素が複合的に影響し合うことで、ADHDの方の自己管理の難しさを引き起こしています。
ただし、適切な工夫やサポートを取り入れることで、自己管理能力を高めることも可能です。
ADHDの方の自己管理術
自己管理術として、ADHDの特性に対応するための工夫やスキル、サポートを紹介します。
□ルーチンの確立と視覚的なスケジュール
ADHDの特性「注意散漫」に対応するためには、規則正しいルーチンの確立が欠かせません。毎日の活動を一定のルーチンに組み込み、さらにカレンダーやチェックリスト、ホワイトボードなど、視覚的に見える形でスケジュールを作成します。これにより、何をすべきかが明瞭になり、脳がタスク(仕事・作業)を処理しやすくなります。
※ルーチンとは、決まりきった手順や手続き、動作のことです。
□タスクの細分化と優先順位付け
大きなタスクは、いくつかの小さなステップに分解し、優先順位を付けて取り組むことで、全体の仕事量に圧倒されにくくなります。
タイマーやポモドーロテクニックを活用して、集中しやすいように時間管理するのも効果的です。短時間の集中と休息を繰り返すことで、注意散漫になるリスクが減り、作業効率が上がります。
※ポモドーロテクニックとは、25分作業したら5分休憩する、というサイクルを繰り返す時間管理術です。
□環境の整備
集中しやすい静かな場所を確保して、不要な物や気を散らす要素を取り除いて、必要な物だけを手元に置き、整理整頓を心がけることも重要です。生活環境をシンプルにすると脳の負担が減り、タスクに対する集中力が高まります。
□リマインダーやアラームの活用
スマホや専用アプリを使って、重要な予定やタスクのリマインダーを設定します。これにより忘れやすさをカバーできます。
ADHDの方にとってデジタルツールは、時間管理やタスク管理をサポートする重要な役割を果たし、脳の負担を軽減してくれます。
□自己理解とセルフケアの促進
自分の集中できる時間帯や落ち着ける環境をよく理解し、無理のない計画を立てることが重要です。ストレスや疲労は衝動性を高めます。そのため、適度な運動や休息、リラクゼーションを取り入れること、趣味やレクリエーションの時間を持つことも大切です。
□サポート体制を組む
家族や友人、専門家と連携し、定期的な振り返りや励ましを受けることも効果的です。必要に応じて、カウンセリングやコーチングを利用するのも良いでしょう。
悩みを抱えているなら相談窓口や支援機関へ
毎日の仕事や生活の中で、ADHDによる悩みや不安を抱えているなら、専門の相談窓口や支援機関を利用してみましょう。
■発達障害者支援センター
発達障害のある人への支援を総合的に行うところです。
発達障害のある人とその家族が豊かな地域生活を送れるように、関係機関と連携して支援ネットワークを作りながら、発達障害のある人の日常生活や仕事、人間関係など、幅広い相談に応じます。
■障害者就業・生活支援センター
障害のある人の生活と仕事を、両面から相談できるところです。
生活面では、生活習慣や健康管理、金銭管理など、日常生活のセルフケアの支援。就職面では、職場準備訓練、就職活動支援、職場定着支援などを行います。
■地域障害者職業センター
障害者が仕事について相談したり、助言を受けたりできるところです。
具体的には、職業相談・職業支援、職業能力評価、職業準備支援、職場適応支援などを行います。事業主に対する支援も行います。
■ハローワーク
雇用に関する事業の中心的役割を担っているところです。
障害者の就労に関する窓口でもあり、障害者専門の相談員を配置して、障害の種類や程度に応じてきめ細かな職業相談や紹介、職場定着の指導などを行います。
■就労移行支援事業所
一般就労を目指す障害者が、生産活動やその他の活動の機会を通じて、就労に必要な訓練や指導を受けられるところです。
標準利用期間は2年間ですが、必要性があれば最大1年間の更新が可能です。
まとめ
それでは、この記事をまとめます。
初めにADHDの定義と特性を解説しました。
次に、ADHDの方が自己管理を苦手とする理由を説明しました。
次に、ADHDの方が自己管理能力を高める工夫とスキルを解説しました。
最後に、仕事や日常生活で悩まれているADHDの方の相談窓口と支援機関を紹介しました。
ADHDの特性の現れ方には個性があり、その現れ方は一人ひとり多様です。
また、自己管理のやり方を知っても、実際に職場や家で活用することに難しさを感じる方もおられるのでは……。
そこでおススメなのが、就労移行支援事業所「ケイエスガード」です。
ケイエスガードでは、あなたの得意を大切にし、あなたのペースを第一に考える就労サポートを行います。
また、今回の記事で紹介した自己管理能力を高める工夫やスキルも、スタッフがあなたの特性をよく理解した上で、実践で役立てられるよう分かりやすく指導いたします。
興味のある方は、ぜひ一度ご相談下さい。電話やLINEからもご相談可能です。