「遊んでいる時は元気だけど、仕事には行けない」
このような悩みのある方は、もしかしたら非定型うつ病かもしれません。
非定型うつ病は特に若者の間に増えていて、一般的なうつ病とは異なる特徴が多くあります。
症状の出かたから、怠けている・サボっていると心無いことをいわれがちです。
この記事では現役の精神科看護師が、非定型うつ病の症状や気になる仕事への影響を解説します。
非定型うつ病は、放置すると仕事だけではなく生活に支障をきたす病気です。
この記事が、仕事に行けないなどの悩みがある方の参考になれば幸いです。
※この記事はあくまで一般論で、診断するものではありません。
非定型うつ病を心配される方は自己判断せず、必ず受診するようにお願いします。
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ぜひお聴きください。
非定型うつ病とは
非定型うつ病はささいなことで落ち込み、楽しいことで一時的に回復するのが特徴のこころの病気です。
一般的なうつ病は一日中うつ状態が続きますが、非定型うつ病は趣味など好きなことで元気になります。
しかし楽しいことによる気分の改善は一時的なので、また抑うつ状態に戻ってしまいます。
非定型うつ病では、他にもうつ病と異なる以下のような症状があらわれます。
- 気分反応性（ささいなことで落ち込み、楽しいことで回復する）
- 不安・抑うつ
- 対人関係で傷つきやすい
- 過食や眠りすぎてしまう
- 鉛様麻痺（身体が鉛になったように重く動けない）
- 衝動行為（自傷行為、キレて物を壊すなど）
非定型うつ病の方は、周りから理解してもらえないことに苦しむ方も少なくありません。
理解されにくい理由として「仕事には行けないのに、遊びには行ける」という特徴が大きく影響しています。
「怠けている」「わがまま」と非難や誤解され、本人のつらさは理解されにくいのです。
しかし放置すると生活全般に支障が出てしまうため、早めの受診が必要になります。
非定型うつ病になりやすい人の特徴
非定型うつ病になりやすい人は、不安に押しつぶされやすい繊細な人が多いといわれています。
年齢が若い・女性
非定型うつ病は、20〜30代の若い女性に多いのが特徴です。
ちなみに、一般的なうつ病は中高年男性に多いといわれています。
繊細・不安に対する耐性が低い
繊細で自分に自信が持てないタイプも、非定型うつ病になりやすいといわれています。
他の人より不安に耐える力が弱いため、パニック障害・不安障害を併発する方も少なくありません。
誰にも嫌われたくないという気持ちが強い一方で、他人の発言に過敏に傷つきやすい傾向もあります。
非定型うつ病の症状
一般的によく知られているうつ病と、非定型うつ病の症状は異なる部分が多くあります。
気分反応性
ちょっとしたことで落ち込み、本人にとって楽しいことがあれば元気になる症状が「気分反応性」です。
一般的なうつ病では楽しいことで気分は回復しませんが、非定型うつ病の場合は回復します。
そのため、非定型うつ病では気分の浮き沈みが激しいのも特徴です。
気分の浮き沈みを起こす原因は、対人関係によるものが多いといわれています。
他の人はささいなことでも、大きな衝撃をうけて落ち込んでしまうのです。
同じ気分の浮き沈みのある病気として、双極性障害（躁うつ病）という病気があります。
双極性障害は、自信過剰で活動的になる躁状態とうつ状態を繰り返す病気です。
非定型うつ病と双極性障害は、見分けるのが難しいこともあります。
不安・抑うつ
不安になりやすく、一般的なうつ病のような抑うつ状態になります。
具体的には悲しくゆううつな気分になり、夜になると涙が止まらないといった症状です。
対人関係で傷つきやすい
非定型うつ病では、ささいなことですぐに傷つき、落ち込みやすい「拒絶過敏性」もみられます。
ちょっとした注意で全人格を否定されたと感じたり、ささいなことで相手に拒絶されていると感じたりします。
自分のストレスの原因を、まわりの人や環境のせいだと思いやすいのも特徴です。
食事や睡眠の変化
寝ても寝ても眠い過眠や、とくに甘いものをドカ食いしてしまう過食も症状のひとつです。
不眠や食欲不振がみられる一般的なうつ病とは、症状のあらわれ方が逆といえます。
鉛様麻痺
身体が異常に重く動けなくなる「鉛様麻痺」も特徴的な症状です。
鉛様麻痺によって朝に目が覚めても起き上がれず、仕事を休んでしまう人も少なくありません。
衝動行為
リストカットなどの自傷行為や、怒り発作で大声を出したり物を壊したりする衝動行為もみられます。
ささいなことでイライラしたり怒ったり、感情のコントロールがうまくいかないことがあるためです。
衝動行為を起こしてしまった後、激しい自己嫌悪におちいります。
他にも、過去のつらいできごとを思い出すフラッシュバックで苦しむ場合もあります。
非定型うつ病の治療法
非定型うつ病のおもな治療法は以下の通りです。
- 症状に合わせた薬物療法
- 認知行動療法
- 生活改善
それぞれの治療法を具体的に解説します。
薬物療法
抗うつ薬や抗不安薬など、症状をやわらげる薬を使って治療をおこないます。
パニック障害や不安障害などを併発していることも多く、1人ひとりの症状に合わせた薬が処方されます。
認知行動療法
薬物療法と並行して、認知行動療法もおこなわれます。
認知行動療法とは、考え方のゆがみを修正し幅を広げていく治療法です。
非定型うつ病の方は、物事の受け止め方がネガティブになりやすい特徴があります。
認知行動療法をおこなうことで、ストレスを軽くし回復後の再発予防にも効果があります。
生活改善
規則正しい生活や、適度な運動も治療に取り入れられます。
とくに過食・過眠がみられる方は生活リズムが乱れがちです。
軽い有酸素運動は体力をつけるだけではなく、脳の血流をよくする効果も期待できます。
仕事は続けることを勧められる場合が多い
非定型うつ病の方は、治療中も仕事を続けるように勧められる場合が多々あります。
仕事を休むことにより生活リズムが乱れ、昼夜逆転しやすい傾向があるためです。
一般的なうつ病と違い、すこし頑張る場面をもうけると良い結果になりやすいのもあります。
働き続けることは身体を動かす機会になり、治療中の収入面での不安も少なくできます。
休職になるケースは、どうしても仕事に行けないほど症状が重い場合です。
まとめ：非定型うつ病は甘えや怠けではない
非定型うつ病は、若者によくみられる気分にムラの多いタイプのうつ病です。
抑うつ状態のほかに不安を抱きやすく、ささいな対人関係で深く傷ついて反応してしまいます。
また、過食や過眠、鉛様麻痺といった症状も影響して生活リズムが乱れやすいのも特徴です。
非定型うつ病は仕事に行けないのに遊びには行ける特徴から、誤解されやすい病気でもあります。
甘えやわがままといったものではなく、非定型うつ病の症状のひとつです。
治療には薬物療法と並行して、認知行動療法・生活改善なども取り入れられます。
仕事はなるべく続け生活リズムを整えることが、治療に有効なケースが多くあります。
放置してしまうと症状が悪化して生活に支障がでるため、早めに受診するようにしてください。
「仕事や職場でうまくいかない」と悩む非定型うつ病の方は、就労支援の利用ができる場合もあります。
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就職に有利になるスキルの修得・生活リズムの安定も含めた就職前後のサポート全般をおこないます。
無理なく自分のペースで利用できるので、気分や体調にムラがあっても続けやすいのもメリットです。
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