近年『PTSD』という言葉を耳にする事が多くなりましたよね。『PTSD』は、強い精神的ストレスや恐怖体験・ショック体験を受けた事で発症する心の病気の1つです。
災害・事故・暴力等がきっかけで誰もが発症する可能性がある身近な精神疾患となってきているので、紹介します。
『PTSD』とは?
『PTSD』は「post traumatic stress disorder」の略で『心的外傷後ストレス障害』と呼ばれています。『PTSD』は発症する際、脳の扁桃体と海馬が損傷や萎縮し、脳内トラブルによって思考のコントロールが出来なくなっている状態です。
元々『PTSD』は、第1次世界大戦からの精神疾患と言われており、多くの兵士のメンタルが崩壊し、戦争でのトラウマが忘れられず、日常的な苦痛を受ける事を指していたようです。しかし、戦争以外でも似たような症状を訴える人が増えてきたことから『PTSD(当時は戦争神経症)』の研究が進んでいったそうです。
日本で『PTSD』だと診断されるようになったのは、実は最近の事で「地下鉄サリン事件」や「阪神・淡路大震災」を機に『PTSD』患者が激増したそうです。WHOの調査によると、日本では特に20~30代が『PTSD』と診断される事が多いようで、3.0~4.1%にものぼるのだとか。
『PTSD』は、うつ病・適応障害・不安障害・アルコールや薬物依存症等と併せて発症する事が多いようで、なんと!『PTSD』と診断された人の3分の2が他の症状と合併しているのだとか。
他にも『PTSD』には『複雑性PTSD』と呼ばれるものもありますが・・・『PTSD』との違いは、幼少期から長い間、虐待・暴力・いじめ・性的虐待等を受けており、回復までには長い月日を要する事にあります。自傷行為を行う人が多く、解離性障害や境界性パーソナリティー障害等と併せて発症している可能性が高いのだとか。
『PTSD』の症状
『PTSD』は先ほどもお話した通り、強烈な体験をすることでアドレナリン等が一気に放出され、その当時の感覚が蘇り、日常生活に支障をきたします。例えば、突然のフラッシュバック(追体験)。
悪夢・不安・恐怖感・緊張・めまい・頭痛・不眠・動悸・集中力の低下(過覚醒)。怒りや無意識のうちに事件や事故等でトラウマになった場所を避ける(回避行動)等の症状が現れ始めます。このような症状が短期間で起こり消える場合(1か月未満)は『ASD(急性ストレス障害)』。
1か月以上、追体験・過覚醒・回避行動の3つの症状が続く場合は『PTSD』と診断されるようです。人によっては、数ヶ月から数年後に症状が現れる事もあるそうなので要注意。
『PTSD』になりやすい人とは?
『PTSD』は男性と比べ女性は2倍もなりやすいと言われています。というのも、女性は力が弱いので、虐待・暴力・性的暴行等の被害にあう可能性が高くなってしまうからです。
被害者は自分に落ち度があったのではないか。と自分を責め沈黙し、孤立している場合が多いので、実際に『PTSD』の人はもっと多いのではないかと言われています。
また、完璧主義な人・人に相談できない人・自分の弱い部分を見せられない人・貧困・家庭環境・シングルマザーに悩んでいる人は『PTSD』の発症リスクが高いそうです。
『PTSD』治療法
『PTSD』治療法には「精神療法」「薬物療法」そして「磁気刺激治療(TMS治療)」があります。治療をする事でトラウマになった出来事を過去に起きた事だとしっかり受け止め、受け入れ消化させる事が大事になってきます。
「精神療法」
自然回復を促す精神療法で今一番行われているのが「認知行動療法」。「認知行動療法」は、カウンセリングの1つで、物事のとらえ方、考え方、感情、行動を変化させ、トラウマを治療していきます。
「認知行動療法」の中には「持続エクスポージャー(暴露療法)」と呼ばれるものもあります。心身共にトラウマに向き合うものにはなりますが・・・専門の治療者の元で行うのであれば、トラウマに慣れていき『PTSD』を克服する事が出来るようです。
また、専門の治療者による「EMDR」という眼球運動によって過去の体験を思い出すという治療法もあり「EMDR」を行う事で、考え方を修正し、ストレスを軽減するそうです。その他にも同じような体験をした人達が集まり語り合うグループ療法もあります。
「薬物療法」
『PTSD』は、うつ病や不安障害等と合併している事が多いので、一般的に抗うつ薬(SSRI)が使用されます。
ただ抗うつ薬を飲んでも根本的な解決にはならないそうなので、薬を服用しながら「精神療法」を行うのが良いとされています。
「磁気刺激治療(TMS治療)」
実は「磁気刺激治療」が日本で認可されたのは今から3年前の2019年。まだまだ新しい治療法ではありますが、脳に磁気刺激を与える事で脳の機能を正常に働かせてくれるようです。
『PTSD』は、脳内トラブル(脳の機能的異常)によって生じるので「磁気刺激治療」は効果が期待出来そうですよね!また、「薬物療法」と比べ短期間で症状が改善し、副作用もほとんどない事も◎
私達が出来る事
家族、友達、恋人・・・大切な人が『PTSD』を発症したら、まず安心出来、居心地の良い環境を作ってあげる事が必須となります。無理に何かを聞き出そうとするのではなく、しっかり話を聞いてあげましょう。
その際、変に共感したり、ポジティブな事(無責任な事)や責める事を言ってしまうと「あなたに私の気持ちなんと分かるわけがない!」と心を閉ざしてしまうので要注意。
『PTSD』は、放置すると重症化するので、少しでも自身の身体や心に異変を感じたら病院に行き、適切な治療を受けましょう。他の病と同様に『PTSD』も早期発見が重要になりますよ。